<共感スタート>

「(重田くんは松原くんといる時いつも笑顔だなぁ。)」

倉庫で話している二人を沢井が見ている。

沢井というのは女子バスケ部のキャプテン。
最近同じクラスの重田(テニス部)のことがちょっと気になっている。

「(今日、部活の後にやっぱり言おうかな。)」

沢井はそう決め、部活を終えた後テニス部の所に向かった。
様子を伺い、重田が1人で荷物をまとめている所を狙って声をかける。

「重田くん、ごめん、今ちょっといいかな。」

「あ、沢井さん。
 どうしたの?」

重田は少し不安そうな顔で沢井の元に近寄った。

「あのさ、私….。
 時間かけて言うのもあれだから率直に言うね。
 実は私、重田君のことが好きなんだよね。
 付き合ってくれないかな…?」


テニスコート横に11月の冷たい風が吹き抜ける。



「え、俺..?」

重田は困った顔をしていて何も言えずにいる。

「私じゃ駄目かな…?」

「駄目とかはないよ。」

「じゃあ、いいってこと?」

「….うん。」

「本当に?ありがとう。」


そうして、沢井と重田はすんなり付き合うことになった。



翌日、沢井は渡り廊下にいた重田に声をかける。

「今度の土曜日さ、どっか食べに行かない?」

「うん、いいよ。」

「重田君はどこがいい?」

「どこでもいいけど、沢井さんは?」

「じゃあこの前新しくできたカフェに行く?」

「うん、いいよ。」

そうして2人は初めてのデートをすることになった。

当日、カフェに行きその後ゲームセンターでUFOキャッチャーをした。

デートの途中、重田から沢井の手を繋ぎにいった。

少し驚いたが、沢井は握りかえした。

最後、雑貨屋に寄って、特に何かを買うわけではなくお店を後にした。


デートの帰り道、急に重田の口数が少なくなった。

それはちょうど横断歩道で信号を待っている時だった。

重田が重い口を開く。

「あのさ、近くの公園に寄らない?」

時刻は18時過ぎ。
辺りは暗くなってきていた。

公園に入り、奥にあるコンクリートでできたオブジェの前で足を止めた。

周りを見て誰もいないことを確認し一呼吸置くと、重田が口を開き、突然謝った。

「沢井さん、ごめん。

 突然で驚くかもしれないけど、
 実は俺..
 ゲイなんだ。

女の子と付き合ってみようと思ったというか、流れでOKしてしまったんだけど、
やっぱり自分はゲイなんだと思ったよ。

失礼だよね。本当にごめん。」

沢井は言った。

「そ、そうだったんだ…

….分かった。」

少し沈黙が続いた後、沢井が口を開く。

「で、でも、ゲイで生きていくのって大変じゃないの…?

周りの目とかもあるだろうしさ。」

「それは、、
 うん….」

「重田くんがゲイって分かったけど、
 カモフラージュで私付き合ってもいいよ。」

重田は想定していない返答で驚いた。

(確かに周りの目は気になる….)

重田は、思わず言った。

「いいの?」

「うん。いいよ。」

「ありがとう。」

重田がそう言うと、二人は別れることなく関係を継続した。

その日からも周りの友達から二人はカップルとして認識され、いつも通りの日常を送った。
たまに校内でカップルらしい会話などをし、本気で交際しているかのように振る舞った。

そんな時、久々に二人の部活の帰りが重なって、一緒にファーストフード店でご飯を食べることになった。

ご飯を食べながらたわいもない話をして、二人で歩いて帰ることにした。

話題がつき、沢井はこの前の重田のカミングアウトに何となく触れようかと考えていたところ、
重田が口を開いた。

「あのさ、この前の公園に寄らない?」

微妙な空気が二人の間に流れる。
あの公園に行くと、この前の事が思い出されるのだ。

この前の公園のオブジェを避け、鉄棒横のベンチに二人とも座った。

重田は息を吸い呼吸を整え、言った。

「俺さ、あれから考えたんだけど、
 やっぱり人生って一度きりだから、ゲイとして男の人と付き合いたいなって。
 
 昨日、死ぬ直前の自分を想像してみたんだよね。

 もしゲイであることをカモフラージュして生きたとしたら、後悔しそうだなって。
 どうせ死ぬのに、ゲイであることを何で隠してこそこそ生きたんだろうってさ。
 死ぬ直前に後悔してもどうにもならないからさ。

 俺に合わせてくれたのに本当にごめん。

 でも、付き合ってくれてありがとう。」

重田の言葉を聞いて、沢井の目から自然に涙がこぼれ落ちた。

重田は、もう一度謝る。

「本当にごめん。」


「違うの。振られたから泣いてるんじゃないの。

 実は、私…レズビアンなの。

 重田くんがゲイなのは、実は私が告白する前から気づいてた。

 最悪だよね。ごめん。

 カモフラージュさせてあげるといいながら、私が1番周りを気にして、
 ゲイの重田くんなら何もしてこないだろうしと思って。

 謝らないといけないのは私の方。

 本当にごめんなさい。」

重田は驚いたが、色々と考えた後言った。

「そっか….」

重田も沢井の気持ちが痛いほど分かるから、全てを悟って、責めることはできなかった。

重田は無言で沢井にハンカチを渡す。

沢井は言った。
「ごめんね、ありがとう。」

それからベンチに座ったまま少し時間が経ち、沢井は何を話そうかと考えていたところ、
重田が突然立ち上がって沢井に言った。

「じゃあさ、俺たちが別れた後、

 沢井さんに彼女ができるか、俺に彼氏ができるか、どっちが先か勝負だね。」

「何それ。」

沢井は見上げてそう言い、重田と目が合うと、二人は全身の緊張した力が抜けて笑った。

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